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「印象派」とパリのカフェでのジャンヌ・モロー

「テレビジョンは状況である~劇的テレビマンユニオン史」(岩波書店)
映像バージョン④ 1980年

1980年、ヨーロッパへの私の初取材。私はTBS30周年の企画だった「印象派」を3時間の番組として提案し、TBSが決断した。美術番組としては最初にして最後とも言えるスペシャル長時間番組である。
このコメンテーターに誰を起用するかは、重要な判断だった。
わたしはふと、高校生時代から憧れていたフランスの女優ジャンヌ・モローの顔を思い浮かべた。
彼女は「ルミエール」(光)という映画を演出していた。

彼女が私の出演交渉を受けた経緯は私の著書『テレビジョンは状況である』に書いた通りである。
彼女らしい受諾の仕方で私の番組の出演者になってくれた。夢のような快諾だった。

私のパリでの撮影がはじまった。
最初はジヴェルニーにあるモネの庭から。チームは緊張しながらの世界の名女優との撮影だった。
印象派の舞台になったセーヌ川沿いでの、ピサロやセザンヌやモネら印象派の画家たちの追想。
彼女は自分の撮影に暇ができると、自分でパンやハムや野菜を買ってきて、私たちの昼ごはんを作ってくれる。『私は料理が旨いのよ』と笑う。

パリ市内。
私が撮った彼女の、カフェでふとひとりで思いにふける彼女の写真。
私の好きな彼女のひとときの美しい表情である。私の傑作写真の中の1枚である。

 

パリのカフェでのジャンヌ・モロー

 

「印象派」は多くの人の絶賛を得た。私が演出家として受賞した最初の作品になった。