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私の書籍 その5

1960年代のおわりに、TBS闘争が始まった。そのTBS闘争に関わっていた先輩たち、萩元晴彦、村木良彦、今野勉の共著『お前はただの現在にすぎない』に出逢ったのも同時期である。この本は新しい組織論として私を刺激した。その本でメディアを知的にとらえる新しいテレビ論を知る。

お前はただの現在にすぎない

お前はただの現在にすぎない

共著者だったその先輩たちが自由なる創造の組織を志すというテレビマンユニオンを結成するにあたって、私も誘われた。私は30秒でYESと答えた。この即答はメンバー参加の最短時間だったと後に言われた。TBS退社は私にとっては叛乱ではなく。自分の自立への旅立ちだった。自分で選択した自意識だった。

当時は成田事件、田英夫事件、TBS社内での不当人事異動闘争などが連続的に勃発していた。その間、私はTBSの演出部に籍を置きながらも部から指示される業務も少なく、映画の鑑賞に多くの時間をさいていた。フェリーニ、ベルトリッチ、ヌーベルヴァーグ、シャブロル、ゴダール、トリュフォーに憧れて、TBS闘争にも距離を置きつつ、映画館に埋没していた。そのときに出逢ったのが映画『2001年宇宙の旅』である。アーサー・C・クラークのSF小説を原作としていたが、原作が出来上がったのは映画の制作後だった。映画と文学と言う両面で私の創造の心を揺さぶった。
        

2001年宇宙の旅 原書

2001年宇宙の旅原書

その頃読んでいたもう一冊の本がバックミンスター・フラーの「Operating manual for spaceship EARTH~宇宙船地球号操縦マニュアル~」の原書版だった。フラーは言う。「世界の中で対立している政治家たちや、イデオロギーのドクマの危険な袋小路が加速度的にふえている時に、これをいったいどうやって解決したらいいのかと私にお尋ねになりたいかもしれないが・・」と前置きし、「どんな政治家も、人間すべてを安全に着陸させるコンピューターと安全飛行コントロール機能には喜んで屈従することができるし、屈従する」(西北社版 東野芳明訳)とかなり現代的な発言をこの時代にしている。そして「だからこそ創作者、建築者、技術者が大事なのだ」と強調する。「私は、人間の独創力、しかも時にはたいへん即応性の強いすぐれた独創力が、たまらなく好きだ」と訴えている。至言である。

 

宇宙船地球号・操縦マニュアル

宇宙船地球号・操縦マニュアル

2017年の今、ふと考えてしまう。1970年代に感じた自由感が果たしてこれからも生き残れるのだろうか?
(次号につづく)