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サン・ルイ島の散策

サン・ルイ島の散策

パリには幾度もの旅を重ねたが、なぜかサン・ルイ島を歩いたことがなかった。

サン・ルイ島はセーヌ河の中州にあり、サン・ルイ橋でもう一つの中州の島シテ島につながっている。この2つの島がパリ発祥の地と言われている。

サン・ルイ橋からはサルヴァドール・ダリが鳥の背中のガラと言ったノートルダム寺院の後ろ姿が見える。サン・ルイ島は高級住宅地で、歴史的建造物も多い。 セーヌの岸辺に降りてみる。5月の川の流れは上流から雪解けの水が流れこみ水嵩を増している。いつもは岸辺に腰掛ける恋人たちの姿が見えるのだが、水がその岸を埋め、流れも速く、甘い散策を拒んでいる。セーヌ河に両岸をさえぎられて、水が音を吸い込むのだろうか、サン・ルイは静かな孤島になる。見上げるとマロニエに重なるように小さな白い花が咲いている。木の葉を反射し、セーヌが深い緑色に見える。

この島の真ん中を1本、縦に道が走っている。このサン・ルイ通りを歩くだけでグルメの素敵な散歩道になる。肉屋はパリの肉通に知られる老舗の店だし、パン屋も朝から列ができるほどの繁盛である。おいしいチーズの小店もある。この島は日本人にはアイスクリーム島といわれるほどアイスクリームがおいしい島である。ペルティオンのアイスクリームは、夜のワインのために甘いものを避ける私でも賞味の楽しみを避けがたい。ピスタッチオの粒を舌に感じながら、ゆっくりと喉に通す。周囲をぐるりと歩いても5分。こんな瀟洒なエリアを生み出すパリジャンの叡智を知る。いやパリジャンと言うのではなく、ルイジャンと島の住民たちは言うらしい。ボードレールもカミーユ・クローデルもこの島に住んでいた。夜は怪しい翳りもあるのかもしれない。