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三宅一生の本

岩波書店から私が聞き手・編の「三宅一生 未来のデザインを語る」が出版されました。

1970年代は激動の時代であり、劇的な時代でもありました。60年代の五月革命やプラハの春を感じとった創造の旗手たちが、西欧の理念に日本の美学を交錯させて、新しい感覚を次々と生み出していったのです。パリから三宅一生さんが、ロンドンから山本寛斎さんが、ファッション界に刺激的な発信をしていました。私は東京12チャンネル(現テレビ東京)の「私がつくった番組」を演出していて、三宅一生さん、山本寛斎さんの番組を演出しました。その時代からおよそ40年の時間が流れても、お二人の活躍は続いています。三宅一生さんとは、21世紀に入っても親しくしていただいています。

六本木の東京ミッドタウンに建てられた彼の夢のデザインミュージアム「21_21 DESIGN SIGHT」が完成するまで、そして完成の後も、私は三宅一生さんのお話をそばで聞いていました。私も三宅さんと同じ時代を並走していたからかもしれませんが、お話をいつも控えめにする三宅さんが、私とは何故か長い時間、心を開いて話していただけました。予定の時間をはるかに越えても止まらなかったお話に、彼のほんとうの哲学がいつのまにか浮かびあがってきます。「デザインには希望がある。そして、デザインは驚きと喜びを人々に届ける仕事である」。「衣服は人間のためにある。人間が衣服のためにあるのではない」。この本は三宅一生さんの言葉の結晶です。ご一読を薦めます。これは人間の美学です。付録のDVDは私の演出です。