column

銀座にも歴史の波乱がある

<2015年3月10日 記> ■かつて行きつけていた場所が消えていくという悲しい変化は私だけが感じているのだろうか。大正は明治を消し、昭和は大正を消し、そして平成は昭和を消そうとしている。社会的な変化だけではなく、政治的にも、外交的にも、経済的にも、科学的にも . . .

桜は「時の流れ」の花

<2014年11月30日 記> ■時が経つのが速いという感覚は経年者のものと言われたが、今は若い世代もその速さに同感する。「この前桜が咲いていたばかりだよね」という実感が秋風の寒さの時季に語られる。 ■桜はいつも時間のことを想わせる。一斉に咲いて、一斉に . . .

神は骸子(さい)を振らない

<2014年9月15日> ■朝の出勤時の小田急線に乗り、周りを見廻すと、ほぼ七割の客は携帯を覗いている。小学生が三人、みな同じゲーム機を操り成績を競っている。勤務に向かう女性は右手一本でメールを送り続ける。優先席に坐る母親は膝に抱いた幼子の手なぐさみにスマホを . . .

言葉はたえず変化し、揺れている

<2014年5月31日> ■広辞苑の新しい第六版総革製机上版を贈り物として頂いた。2冊に分冊されたが、それでも手に持つには重すぎて、膝の上にそっとおろして表紙を開く。印刷された紙の香りが匂う。パソコンやスマホで言葉の意味を引く今の世代にはこんな厚くて重い書物を . . .

雪が教えてくれる非日常のすばらしさ

<2014年2月28日 記> ■美しい雪が降る。上野学園 石橋メモリアルホールで開催された「プロジェクトQ」の最終日に雪が降った。今年の「プロジェクトQ・第11章」は、若いクァルテットたちがショスタコーヴィチの初期弦楽四重奏曲6曲をテーマにして、弦楽四重奏の演 . . .

テレビジョンは消えるが、文章は残る

<2013年11月30日 記> ■東京の秋は短かい。晩秋になって、私の2013年の出版『テレビジョンは状況である〜劇的テレビマンユニオン史』(岩波書店刊)を読了した方々から多くの手紙や直接のお言葉をいただいていた。この欄からとりあえずの感謝を伝えさせていただく . . .

テレビは触覚・聴覚のメディアである

<2013年8月31日 記> ■テレビマンユニオンという9文字のカタカナに中黒を入れてみた。テレビ・マン・ユニオン。これでテレビマンユニオン論を書いてみる。そう思ったが、一笑に付された。それは正しい冷笑である。テレビマンユニオンはもう確立された組織なのだから。 . . .

時間はたっぷりあるざあます

<2013年5月31日 記> ■銀座は私の大好きな空間である。正月はいつも銀座で迎えていた。ホテル西洋銀座は銀座1丁目、京橋の橋のたもとにある。そこには昔、「ベン・ハー」や「2001年宇宙の旅」を見たテアトル東京があった。近くの銀座タニザワの鞄店やトラヤの帽子 . . .

雪は黒い

<2013年2月28日 記> ■3月3日ひな祭り、東京オペラシティコンサートホールには笑顔が集まった。世界的なヴィオリスト今井信子さんの70歳記念ヴィオラ協奏曲コンサートだった。モーツァルト、バルトーク、武満徹作曲の協奏曲3曲の演奏に、客は胸をときめかし . . .

ホッパーの夜鷹になる

<2012年11月30日 記> ■落葉はパリに似合う。石畳に落ちた葉が歩く人の足にまとわりつく。そんなシャンゼリゼの果てで、ふと見上げるとグラン・パレで開催中の展覧会が宣伝されていた。ほんとうだろうか。私の大好きなエドワード・ホッパーの展覧会だった。幸運な偶然 . . .